病み上がりで足元のふらつきが残る先日の夕方、私の目の前を真新しくて綺麗に洗車された車がブーーーンと通り過ぎた。
よく見るとボディーに”JICA”というマークが塗装されている。
”ジャイカ”ってどこかで見た、確かフランスかどこかのボランティアチームやったっけな?!
どうでも良いけど、「ジャイカさーん、助けて下さーい!! 私、困ってるんですよー!!! 原因不明の腹痛なんですー!!!」
と叫びながら追いかけたい衝動にかられた。
帰ってから調べると、日本の政府による支援団体”青年海外協力隊”の事だったんですね。
自分の住んでいる所はあの”青年海外協力隊”が視察に来る様な所なのか、と思うとしっくり来た。
因みに私のいる西スンバでは雨が多く、食料にはそれほど困っていない地域なのだが、一方の東スンバは干ばつがひどく、未だに多くのボランティアチームが来て井戸掘りや農業の支援、炊き出しをしているそうだ。
それでは、前回の胃痛の話の続きです。
スンバ島にもブラックマジック?!【Part1】恐怖のローカル病院
血液検査の結果、私はマラリアには感染していなかった。
良かった!!
となると一体、この胃痛の原因は何だったのだろう。
全ての食事が心当たりに当てはまるので、1日3度の食事を順番にさかのぼって頭に並べるが、分からない。
だが旦那が言うには、前日に食べたナシブンクスの中のアヤム(鶏肉)が臭かった…とか。
もっと早くに言ってくれ!!!
後は親戚の家で飲んだ沸かした井戸水、
そして辛すぎて古いのかどうかも分からなかった小魚、
それに新鮮だけど美味しくなかった焼き魚、
思い出してもきりがないけど、どうせあたるなら生ガキとかお刺身とかケーキとか、もっと美味しいものであたりたかった。
この島では冷蔵庫や氷はそれほど普及しておらず、市場の魚も炎天下の下に堂々と並べられている。
鶏や豚は生きたまま売られているし、食べる時は大体その日のうちに食べてしまう。
牛は予約をしておいて、人数が集まった時点で屠殺されて配られる…そんな感じなのだ。
だから肉っけの無い日も多く、鶏も魚も買えなかった日には、ご飯と野菜と芋とバナナを食べて暮らしている。
これまで美味しいものばかりを食べて生きてきた私にはそれが辛く、ついついお酒に手を出してしまうが、
人間ってこれ位の食べ物だけでも生きていけるのだという事も、知った。
そのうち究極のダイエット合宿ツアーでも始めようかと思う。
本当に、誘惑なんて何にも無い!!
それとこの事についてはまた改めて書こうと思うが、スンバの食事はお世辞にも美味しいとは言えない。
私はインドネシア料理は大好きなんだけど、ここの料理は正直に言ってしまうと全体的にかなり不味い…。
基本的には素材と塩の味しかせず、その素材がまた不味い。
だから私は使い慣れないキッチンで、包丁や鍋や油を探しまわりながら時々料理をしている。
すると自分で言うのもなんだけど…不味くなーーーーい♪
話はだいぶん外れたけれど、そのマラリア検査結果を知り、究極の胃痛の原因について周りからも色々と言われた。
スンバの人はとにもかくにも暇なのだ!!
「ほらやっぱりコーヒーに砂糖入れずに飲むからよ」だとか、
「きっとご飯を1日に3回しか食べないからじゃない」とか、本当に好き勝手言ってくれる…。
そしてその日はマラリアではなかった事にほっとした所で、とりあえず寝る事にした。
と思ったけれど、やっぱり眠れなかった。
舞い戻る胃痛、そしてそれに連動してトイレに駆け込む。
それがほぼ一晩中続きぐったりとした…。
そしてまた不調の朝を迎え、義理の妹が様子を見にやって来た。
彼女は病院で1日2時間看護師をしている。
日本だったらパートでも2時間なんて聞いた事がないし、おそらく朝と夕方の引き継ぎだけでもその位の時間がかかりそうだけど、この島では公務員ですら平日の5〜6時間くらいしか仕事をしていない。
そして、ナースの妹はおなかをポンポン叩いて痛い場所を探るとこう言った。
「分かったコレは”マー”よ。」
「え?!マーとは。」
「何ていうかなぁ、ほら空きっ腹でコーヒーばっかり飲むと胃が痛くなるでしょ!!
でも大丈夫、ご飯を少し食べてこの薬飲んでいれば治るから。」
と言って病院から拝借したのであろう薬を出して来た…。
そしてナースの妹の出現により、そこから私の胃痛の原因は”マー”だったという事になってしまったのだが、
私はその一文字に納得出来ずに、布団にうずくまりながらインターネットで調べまくった。
そしてドクターWikipediaの出した答え…”ウイルス性胃腸炎”これが最もしっくりと当てはまった。
しかし相変わらず続く胃痛に耐えかねて、夕方にもう一度大きな病院に行こうという事になった。
私はまだこの訪れた事のない”大きな病院”というやつに、半分の期待と半分の不安を抱いている。
もし何かの時にはその大きな病院にお世話になるのだろう…、その病院の設備があまりにもお粗末だったらどうしよう。
大型の公衆トイレみたいな建物だったらどうしよう。
秘境の地に住むという事は、そういう事も含めて色々と覚悟しないといけないのだ…。
そして迎えた夕方、旦那がちょっと寄りたい場所がある、と言って家のほぼ近所でバイクを止めた。
ナースの妹も同行していた。
ココで診てもらって違うかったら病院に行こう、試しにと…。
私はまたしても何が何だかよく分からないまま、その民家に入った。
すると、玄関を入ってすぐのリビングに、ちょっとコジャレた風のおじさんが何とパソコンをつついていた。
そして旦那と話した後、スンバでは(海で出会ったオージーを除き)初めて聞く様な流暢な英語で話しかけて来た。
外国人相手のガイドをしているらしく、私の症状についてもとても心配してくれていた。
そして引き続き奥から出て来たおばさんに、ちょっと診てみるからベッドに横になってと言われた。
隣の部屋のベッドに横になると、あぁやっぱり「これは”ナイッ”よ、いっぱい入ってるわ!!!」と言われた。
どうやらそれはバリでいう「ブラックマジック」(黒呪術)の様なものだけれど、
人からかけられたのではなくて、植物や風から人の体に入り込む呪いのようなものらしい…。
いやーーーーそれはナイナイナイそれはナイッ!!!!
私はその手の話を全く信じていないし、それよりも一応医療従事者である”ナースの妹”がその場にいた事が信じられなかった。
医療と呪術なんて、全く逆の立場にあるものだと思っていたからだ。
そして私を連れて来た旦那、それに受付にいる英語が堪能なガイドさん、この島ではズバ抜けて客観的な視点を持っているはずなのに、本気でそんなマジックを信じているのだろうか。
それにこの呪術師は、小学校の先生なんだとか。
明らかに、この島では先端を歩いてそうな人達が、”ナイッ”の診断に首を縦にふっている。
私はどこか知らない場所に一人取り残された様な気持ちになった。
そしてつい3か月前にバリでブラックマジックの話題になった時に、その事を真剣に話する2人のローカルの事を、私ともう1人の外国人で笑い飛ばしていた事を思い出した。
だけど今この状況の中で、私はその呪術師の事を笑い飛ばし家を飛び出す事は出来なかった。
ここでは私一人が異端者であり、昔々からこの地に住んでいる中華系インドネシア人を除いてはたった一人の外国人なのだ。
そしてこの閉ざされた島のムラ社会の中では、私はこの場所の文化に従うしか道は無い。
私はこのナイッというブラックマジックの診断を客観的に見る事しか出来なかったが、
これからどういう”まじない”が始まるのかには少し興味があった。
ところでインドネシア人は原因不明の病気になったりした時に、ブラックマジックをかけられたと言って恐れる。
昔は日本にもそういう話はあったんだろうけど、今では色々な病気は医学的に説明が出来る様になったんだろう。
しかしこの島では特に、病気になっても病院にかかれない人も多く、多くの人がマジックによって亡くなっている…という事になっている。
若くして亡くなった旦那のお父さんの死因についても、ブラックマジックという事になっている。
私の前にお祈りグッズが用意され、呪術師による”ナイッ”落としが始まった。
バリでは”バリアン”と呼ぶけれど、ここでは”プーペ”というらしい。
何かの呪文でも唱えるのかと思っていたら、そんな様子は無かった。
その代わりにTHE シリピナンがまた登場した。
これについてもまた改めて記事を書こうと思うが、この植物を石灰と一緒に噛むと口が赤くなり、
同時にお酒に酔った様な効果が得られるのだが、ここでは老若男女こぞって口を真っ赤にしている。
何とも奇妙な光景なんだけれど、こういうお祈りの時にも使われるらしい…。
長いのがシリで丸いのがピナン。台湾ではビンロウというらしい。
そして呪術師のおばさんは口に入れたシリを噛み砕き、真っ赤になった唾液と共に何とそれを私のへその上に吹きかけた!!
ぎゃぁぁぁぁー、綺麗なお姉さんならともかく、「おばさんやめて〜」と叫びたかった。
それに続いてタバコの葉をへそに思いっきり押し込んだ後、息をふーふーとおなかに吹きかけた。
それを数回繰り返し、
「はい終わりっ」
と告げられ、お腹にのった真っ赤な液体とそこに張り付けられた紙をペロッと剝がされた。
そして私が”ナイッ”に感染(?!)していたという噂は瞬く間にご近所に広まり、
顔を合わせる人みんなにもの凄く哀れそうな目で見られた。
「辛かったでしょう…、ゆっくり休んで!!」
「まさか”ナイッ”だったなんて…可愛そうに。」
いつもほがらかで遠慮無しに挨拶のキスを求めて来るおばあさんまでもが、もうかける言葉も無いという感じで私を見ていた。
こうしてコーヒーの飲み過ぎだと言われていた私の病気は、その呪術師の一言で”ナイッ”という大病に決定したのだ。
明日の朝と夕方、後2回すれば治るからねと、そのあまりにも近所に住む人の良いおばさんの好意をはねのける事も出来ず、私は言われるがままに2回の施術(?!)を受け終わる頃、原因不明の胃痛は見事に消え去っていた。
海で漁師から買った魚。
その場でおろしてもらい、
焼いたら、めちゃウマ〜。
スンバ島にもブラックマジック?!【Part2】スンバ島移住生活

コメント
初めましてこんにちは
体調は如何でしょうか?
主人と二人で心配しています。
スンバ島行ってみたいですね〜
綺麗な海の色憧れます。
ローカルな話題が大好きなのでこれからも楽しみにしています。
早く元気になって下さいね(^_-)-☆
mimi様/コメントありがとうございます。
おかげ様で体調はすっかり良くなりました。
BLOG覗かせて頂きましたが、色々と勉強になります。
それに旦那様と仲が良いみたいで羨ましい限り、是非見習いたいです。
また覗かせて頂きますね。