ブログランキング・にほんブログ村へ ハーフボード 漂流記 BALI | バリと写真と波が好き(湘南移住編)

ハーフボード 漂流記 BALI

波日記

エポキシボードが折れないという噂は、
嘘だった。

実は私、バリ島最南端にある”グリーンボウル”というポイントで、
何と2時間半も漂流してしまった。

職場の上司と二人で海に行き、
「うんー何かでかそう…でも乗れそう…」と思ったのが間違い。
誰もいない海でサーフィンしていると、
みるみるうちに波が上がって来た。
「これは上がったほうが良さそうだ」
と思い、一度インサイドまで戻ったものの、
インサイドにはいつか見た”鳴門の渦潮”みたいな鬼カレントが発生していて、沖に戻される。
「もう一度」と思いながらも、気が付けばもう私のレベルでは乗れない位の波にサイズアップしていった。

そしてとりあえず突っ込んだのも間違い!
巻かれて浮いたその瞬間、足から重みがフッと消えた。
まさか、
そうまさかのボードがマップタツ!
(でもまだ半分残ってた…)

この波で半分のボードじゃあ陸に帰れそうにもない、
でもパニックになったらきっと終わりだ!
そう思って、落ち着こうと一旦沖に出た。

そして「絶対に帰る」と声に出して言ってみた。
ところが、波のブレイクしない位アウトに出たはずが、何故かドカンと私の横でブレイクが始まった。
嘘やん…
昨日見ていたハワイのサーフムービーを思い出した。
だから精神的に救われた部分もある。

「やっぱり無理かも」
「いや帰れる」
「無理かも」
「帰りたい」その繰り返し。
最初に家族の顔が頭に浮かんだ。
お母さんは「あんたは運の強い子やから」って小さいころからいつも言ってくれていた。
だから何となく大丈夫な気もしていた。
でもおばあちゃんの言っていた漁師の言葉「船底一枚下は地獄」という言葉を思い出す…。
お父さんが山登りで遭難した話も思い出した「遭難?!」

その後は次の日の仕事の事を考えた。
確か明日はみんな撮影が入っていて、変われる人がいないハズだ。
ああこんな時に仕事のことを考えるなんて、私は何て日本人的なんだろう…とかも考えた。
そんなこんな色々と考えていた時に、小さな漁船が通りかかった。
「やっぱり私の運は強かった!!」
そう思って必死に手を振った。

「Tolong(助けてくれ)〜!!」力いっぱい叫んだ。
ほんの10mほど先まで近付いて来た漁船、あぁ良かった〜恥ずかしいけれどこれで帰れる。
と思ったのも束の間…
そのまま私に気付かずに、その小さな漁船は通り過ぎて行った。
ブルー過ぎる海のど真ん中で、青ざめた。

この巨大な波に巻かれてその後またあの渦潮にはまったらどうなるんだろう、
もし次に巻かれてリーシュが切れたらきっと本当にヤバイはず、
色々考えたけれどやっぱり半分になったボードで、この巨大なオバケに突っ込む自信が出なかった。
そのまま2時間沖でただハーフボードにつかまりながら、色んな事を考えていた。
不思議なことに、ハンバーグ、スパゲティー、その他ジャンクフードが頭に浮かんだ…食べたい。

ただ流されるうちにますます体は冷えて行き、帰れない妄想が膨らみ始めたとき、その流れ行く先に岬が見えた。
きっとあそこにはさらに沖へと向かう強烈カレントが出ているはずだ。
それに、そこにはグリーンボウル以上のオバケな波が割れていた…。

私の中に恐怖がはっきりと見えた。
あそこまで流れてしまうと、きっともう帰れない。
その時岸の果てに、小さなビーチのような場所が見えた。
「上がるとすればあそこしかないっ」
そう決めて必死に泳いだ。

その小さな砂の色を目指して、ただハーフボードにしがみついて、何本かの波に巻かれ続けた。
そして…15分位だろうか、思ったよりも早くに陸地に足がついた。
割れたボードにつかまってボディーボードの様に波に乗った為に手が切れた位で、気合いほどに苦しい思いはしなかった。
サーフィンを始めるまでの4年間、ボディーボードをしていて本当に良かったと思う。
まさか、ここでいかされるとは思わなかったが、そこらのサーファーよりはハーフボードに乗る技には長けていたと思う。

漁村の人たちが丘の上から私を見ていたみたいで、すぐに漁師さんが迎えにやってきた。
アスファルトも電気も水道も無い小さな村に辿り着き、何かの映画で見たロケーションと全く同じで、夢か現実かもよく分からないままに、裸足で駆け寄って来た村人達と握手した。

コップに雨水を沸かした様な濁った水をもらって、その後はコーヒーをいれてもらって、友達が心配してると言うともと来た場所まで連れて行ってくれると言った。
サンダルを借りたけど、斜面が急すぎてまた裸足になって歩いた。
でも私の足はまた地面を踏んでいる。
「帰って来た!!」
先輩はレスキューを呼んでくれていたみたいで、2個所からボートが既に出発していた…。
そして次の日からは色んな人に謝り続ることになった。

「板が半分帰ってきたけど、私とあと半分が帰って来ない!!」
上司のそんな言葉を聞いた友人や、たくさんの人に心配をかけてしまったけれど、生きて帰れて本当に良かった。
そして、残った半分の板と、切れなかったbillabongのBig Wave用リーシュと、神様に感謝した。
あと、私が帰らない間の2時間半の上司の気持ちを考えると申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
しかも、上司は元海上自衛隊だったそうだ。

コメント

  1. babana より:

    ホンマ無事でなにより・・・(^^;)
    でも気をつけや〜!!!
    危ない事が多いあなただから心配です。

  2. 管理人 より:

    ほんまに、、
    この後は道路に空いていた!m位の穴に落ちました…
    「ありえへん、何で空いたままやねん!!」
    日本なら「裁判&慰謝料」問題のはずやけど、
    ここでは落ちた人が悪いらしい。
    BALIには危険がいっぱいです。

  3. しょーこ より:

    ウチも自分が海で死にかけたことあってフラッシュバックした、、

    とにかくかんちゃん生きててよかった。

    心臓バクバク。

  4. 管理人 より:

    フラッシュバックさせてごめんね…。
    PS 電話したいんやけど、繋がらへん。着信の時に「通知不可能」でかかるから、プライバシー設定でもし拒否ってたらOFFにして。